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子供に勉強は教えるな。

合格発表の朝

合格発表の朝、私は妻を連れて高校近くのファミリーレストランにいました。まだ朝の7時頃だったと思います。モーニングセットを注文したものの、覚えているのはそこまでで、そんなに大事な朝なのに、妻とどんな話をしたのか、自分がどんな気持ちでいたのかさえ覚えていません。ただ、緊張するとおなかの調子が痛くなる質の私は、何度もトイレにいったことだけは覚えています。そこのファミレスはその高校からすぐ近くということもあり、時間がたつにつれ、お父さんやお母さんにつきそわれた子供たちが店に来て、神妙な面持ちで席に座って朝食をとっていました。その光景がまた私の緊張を高め、心臓の鼓動が高まってきました。
気がつくと時計の針は8時45分になっていました。そろそろ高校の校舎に合格者の受験番号が貼り出される時間です。私たちは席を立って、高校のあるほうに歩いていきました。その高校は、熊本県でも人気が一番高い難関高校ということもあり、合格発表を見にきた親子連れの車と朝の通勤ラッシュが重なり、道は渋滞していました。
ちょうど校門の前に来たときです。私は、どうしてもその高校の校舎内に入ることができませんでした。自分自身が若かりし時の合格発表の緊張感とは全然違い、その緊張といったら自分で不思議に思えるほど私をガチガチにしていました。妻は冷静で、私を急かしましたが、私はどうしても入ることができず、結局引き返してきてしまったのです。なさけないと思いながら、妻に生徒の受験番号を伝え、あとは妻に任せました。私は、小走りでなぜか逃げるように校門の坂を下って再びファミレスの方に行きました。そしてファミレスに着いたとき、時計はちょうど9時になっていました。合格発表がされている時間です。私は、その生徒には悪いのですが、「無理だ。無理。絶対無理。あの成績から合格できた人なんていたことないんだから。無理。」と何度も自分の中で繰り返し、自分自身の不安とたたかっていました。時間が過ぎていくのがこれほど長く感じたことはありません。携帯電話を握り締め妻からの電話を待ちました。窓の外を見ると、思いっきりの笑顔で家族に携帯電話で連絡をしている男の子を目にしました。合格発表はもうされはじめたのです。でも私の携帯電話は鳴りません。また外を見ると、泣きながらお父さんに肩をだかれている親子をを見ました。その時、私は、生徒のこれまでの成績が頭の中を駆け巡りました。そのどの成績にしても合格の可能性はみえないのです。だめだ。ため息をつきました。どう考えても電話がかかってくるのが遅いのです。私は握り締めていた携帯電話をポケットにしまいました。

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