痛
私は、レジで会計を済ますと、駐車場に向かい車に乗りました。エンジンをかけて妻がくるのを待ちました。電話はもうあきらめていました。そうしてなんともいえない重い気持ちで車のラジオのスイッチを押しました。流れてくるポップ音楽は、しずんだ気持ちの私とは無関係に、明るい声を響かせていました。すると突然車のドアを軽くたたく妻がいました。私は妻の目をみようとはしませんでしたが、妻は声高に何か言っているようでした。私は右手のスイッチで車のウィンドウをおろしました。すると妻は「あんたなんばしよっとね!合格してたよ!」と窓の外から言い、車から降りるように私に言いました。一気に言われたものですから、それまで空虚感の中にいた私は、妻の言葉をきちんと理解する間もなくそそくさに車から降りて、妻に聞き返しました。「え?合格しとったと?」周りに迷惑なくらい大声だったと思います。
「しとったよ。どこに行っとったんね~」妻はちょっと怒り気味でそういいました。
「いや、見間違いじゃないね?」人に任せておきながら勝手なものです、私は、もしかしたら受験番号の見間違いを妻がしているのかもしれないと思い、何度も聞きました。妻は言いました。「じゃあ、ゆうさんがみてきなっせ!」
私は、歩きました。高校に向かって歩きました。早足で人ごみをかきわけて行きました。まるで徒競走の選手のように。先ほど躊躇していた校門に入り、合格者が貼り出してあるところまで行き、受験番号を目で追いました。ありました。間違いなくありました。合格していたのです。でも、何度も何度も見ました。やっぱり彼の番号があるのです。夢のようとはこのことを言うんだと思いました。しかしそれでも信じられないのです。私はほっぺたをつねりました。思いっきりつねりました。とてもとても痛かった。そこでやっと私は彼が合格していることを信じることができたのです。涙が次から次にあふれてきます。周りは合格発表の日の会場という騒然とした雰囲気なので、恥ずかしさなどはありません。思いっきり泣きました。校門を出て、車に向かい、妻のもとに行き、疑ってしまったことを謝って、あとはもう「ありがとう。ありがとう。」妻に向かって何度も言いました。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている私を妻は笑いながらも「よかったね!」と言ってくれました。
私が、これほどまでに喜んだ理由は、彼の中学校1・2年生の時の成績と彼との格闘の日々があったからなのです。






